世界各国にはテントを住居として使用している例がいくつか見られます。耐久性、機動性に優れたテントは古代のローマ帝国が本拠地イタリア半島から周辺の地域を次々と制圧していきました。その際にローマ帝国の軍人たちは本拠地から遠く離れた戦地に向かい、数か月から数年の間、遠征地での滞在を続けながら軍事活動を行ってきました。彼らは木の棒を立て、そこに布や皮を張ったテントを使用していたと考えられています。また、北アメリカのネイティブ・アメリカンは平原で移動生活を行うためにティピーと呼ばれるテントを住居として使用していました。その利便性は高く評価されており、アメリカ軍の軍事演習のマニュアルには、パラシュートの布と紐とを使ってティピーを作る方法も記載されています。
また平原で遊牧を行っていたモンゴル人はゲルと呼ばれるテントを用いて大自然の中で生活を送っていました。ゲルは移動が可能でありながら、本格的で快適な住環境をもたらします。自然を自在に移動しつつ生活することができた彼らは、13世紀ごろには東アジアを制覇するだけでなく、西方遥かかなたヨーロッパの地まで進出し、地球規模の巨大な帝国を築くことになったのです。これらのように駆動性、耐久力、快適さを兼ね備えた存在として、テントは歴史を刻んできたのです。